簿記、会計に関する疑問

Q1 個人の青色申告用の会計ソフトに「事業主貸」、「事業主借」という勘定科目がありますが、何に使うのでしょうか。

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pic_faq_01個人の事業用の会計ソフトには、「事業主貸(じぎょうぬしかし)」、「事業主借(じぎょうぬしがり)」という勘定科目があり、貸借対照表科目のそれぞれ「貸方」、「借方」に用意されています。

また、税務署に提出する個人の青色決算書(一般用、不動産用、農業用の全て)には、貸借対照表のページがあり、その下の方の左側(借方)に「事業主貸」が、右側(貸方)に「事業主借」が印字されています。
誰もが疑問に思う勘定科目です。
簿記の勉強をされた方でも分からないのは当然ですのでご安心ください。
私の手元にある簿記3級のテキストでは、「引出金」勘定と「元入金」(「資本金」で説明しているテキストもあります)の勘定で説明されていました。
「引出金」は、期中に事業主が生活費などに使用するため現金や預金を引出した際、この「引出金」勘定で処理しておき、期末にその残高を資本金(実務では通常「資本金」勘定は使わず「元入金」勘定を使用します)に振替えるというものです。したがって、「引出金」勘定は、期中にしか存在しません。
会計ソフトを見てみると、「引出金」という勘定科目は用意されいないようです。「引出金」の代わりに「事業主貸」「事業主借」勘定が用意されていると考えた方が理解が早いと思います。
簿記で習うときには「引出金」、税務(確定申告)では「事業主貸」と「事業主借」ということでしょう。

「事業主貸」勘定は資産科目、「事業主借」は負債科目に表示されます。
したがって、「事業主貸」「事業主借」勘定は損益(利益)に影響しない科目であります。
このことから、一言で言えば「事業の所得を計算する際、入出金に伴い、経費にならないものや、収益にならないものを除外したい時に使うほか、事業主が経費を立替えて支払った場合、売上を記帳していなかった場合など、入出金を伴わない場合に、経費となるものや、収益になるものを受け入れたいときに使用する勘定科目」ということになると考えます。

簿記は「事業所得」の利益や財産状況を計算するために行うのですが、個人事業の場合には、事業主に対する給料が認められていないことから、どうしても生活費の引出しが発生します。また預金には「利子所得」に該当する利子の入金が発生します。ほかにも、事業用の車輌の下取りや売却などの「譲渡所得」に該当する取引が発生します。
個人の事業所得の計算においては、 「事業主貸」「事業主借」勘定は損益(利益)に影響しない という性質を利用して、経費と認められない生活費の処理や、事業所得ではない「利子所得」や「譲渡所得」の要因となる取引を事業所得の計算から除外するという目的に利用されています。

一方で、法人所得はというと、個人所得のように「事業所得」や「利子所得」、「譲渡所得」等々の区分はなく、全所得を1つで計算することから、「事業主貸」「事業主借」という勘定科目は使いません。
事業主(?)である役員には役員報酬という給料が支払われ、事業主=役員(?)からの借入金は役員借入金として処理されるからです。
どうでしょうか、「事業主貸」「事業主借」勘定の存在意義がご理解いただけたでしょうか。

簿記3級の勉強においては、個人所得の経理処理を中心に勉強しており、簿記2級の勉強では法人の経理処理を中心に勉強することになります。
そして簿記3級の「資本金」の項目で、「引出金」と「元入金」を勉強するだけです。
その例題も、生活費として引出した・・・とか、経費として認められない所得税を支払った・・・とか、ごく簡単な例が取り上げられているだけで、他の所得区分に属する収入が入金されたとか、源泉税が差引かれて入金された等の例がないことと、確定申告では「引出金」勘定を使わずに、「事業主貸」「事業主借」勘定を使うということが教えられていないために、なかなか理解されないのだと思います。

「引出金」と異なる点は、「引出金」は借方、貸方双方とも同一科目を使用するのに対し、借方科目として「事業主貸」を、貸方科目として「事業主借」を別々に使用するのです。
また、簿記では生活費を例に解説していますが、実務ではこれ以外にも、さまざまな理由で「事業主貸」「事業主借」勘定を使用しています。
なぜ、会計ソフトで「引出金」勘定を使わずに「事業主貸」「事業主借」勘定を使うのか、まだ勉強不足ですが、所得税の決算書に固定文字で記入されていることから、所得税の勘定科目に合わせたのではないかと思います。また、多くの会計ソフトにおいても「事業主貸」「事業主借」という勘定で最初から設定されています。
会計事務所によっては、「事業主貸」、「事業主借」の2つの勘定科目をまとめて、「事業主勘定」という1つの勘定科目で処理しているところも多くあります(この場合は「引出金」勘定と同じ使用方法になります。いづれも貸借科目であり損益科目ではない)。
この場合、決算時に借方、貸方のどちらに残高があるかにより、決算書の作成においては 「事業主貸」、「事業主借」のどちらかに記入することになります。

大事なことは、「事業主貸」、「事業主借」、「事業主勘定」、「引出金」、「元入金」はいずれも貸借科目であり、損益(所得)には影響しない科目であるということです。
この性質を利用して、事業に関係のない入出金をこの科目で処理することによって、現金出納帳の残高や、預金の残高を一致させることができるのです。考えてみれば、個人の所得を複式簿記で処理する際には絶対必要な科目であり、かつ、 とても便利な科目なのです。

ところで、個人で記帳をする際には、皆さんが、事業用の現金や預金と、生活用の現金や預金とをなるべく分けて管理していると思います。(以下、現金や預金のことを「現預金」と表現します)
そして、事業用の現預金の動きから、取引を記帳していると思います。
しかし、事業用の現預金から支出しているのは、全て事業用の経費でしょうか。
少なくとも事業主の生活費を支出しているのではないでしょうか。商売で稼いで生活費に充てることは当然なのですから・・・。

・・・私がお客様に説明する際によく使用する例えです。
「事業している自分」と「生活している自分」が2人いると想像してください。

【生活費を引き出した】
「事業している自分」の普通預金から「生活している自分」に生活費として10万円を支出した場合には、「生活している自分(事業主)」に貸した」と考えます。

事業主貸 10万円 / 普通預金 10万円

事業用の普通預金の残高が10万円減少したが、生活費は経費として認められません。そこで「事業主貸」という損益に影響しない科目を相手勘定にするのです。

【事業資金が不足した】
逆に、事業資金が不足して、生活用の貯金から50万円を事業用の普通預金に移したケースでは、 「生活している自分(事業主)」から「事業している自分」が借りたと考えます。

普通預金 50万円 / 事業主借 50万円

事業用の普通預金が50万円増えているので、記帳しないと預金残高が一致しませんから、当然に普通預金を50万円増やします。普通預金が増えた理由は、収益ではありませんので、損益に影響しない「事業主借」勘定を使用します。

【自分の財布から経費を支払った】
私も会計事務所を経営する個人事業主ですが、日曜日に事務所で使う事務用品など(仮に2千円)をポケットの財布(生活用の財布)から支払って買ってくることがあります。・・・このような場合にも「事業主借」勘定が使われます。
この場合には、 「生活している自分(事業主)」から「事業している自分」が現金を借り、直ちに事務用品を購入したと考えます。

事務用品費 2千円 / 事業主借 2千円

事業用の経費ですから経費科目の「事務用消耗品費」を計上します。相手勘定を「現金」としてしまうと、現金残高と現金の帳簿残高が一致しません。「生活している自分」から借りたとして処理します。

【生活使用分の経費を精算した】
車は主に事業用に使っていますいが、ガソリン代は全額事業用の経費に計上しています(年間30万円)ので、決算時にはそこから例えば1割(3万円)を差引いて残り9割(27万円)を経費として申告するようにしています。

1年間合計で

車輌費 30万円 / 普通預金 30万円

と仕訳されているはずです。これだと3万円が多く経費に計上されていることになりますので、期末(個人は12月31日)に決算整理として

事業主貸 3万円 / 車輌費 3万円

と処理することにより、借方(費用)に27万円が残り、3万円は「生活している自分」が使ったことになります。

【他の所得区分の入金や出金があった】
所得税の種類として配当所得、譲渡所得や一時所得などがありますが、事業用の預金にそれらの入出金が計上されることがあります。
例えば、事業用の機械や車輌を新しい機械や車輌(仮に100万円)の下取り(仮に15万円で売れ、下取に出した車輌の未償却残高が2万円だった)に出すケースがありますが、この場合は事業所得に含めて計算するのではなく、譲渡所得として申告するため、事業主勘定を使用して、事業の経理から抜き出す必要があります。

車両運搬具 100万円 / 普通預金  85万円
/ 事業主借  15万円 (譲渡所得の譲渡価格になります)
事業主貸    2万円 / 車輌運搬具 2万円 (譲渡所得の取得価格になります)

この処理を行って、事業所得の計算から、譲渡価格と取得価格の金額を抜き出したうえで、確定申告時に総合譲渡として15万円-2万円=13万円を申告するのです。

以上説明してきたように、全ての入出金が事業の取引であれば、「事業主貸」、「事業主借」を使う必要はないのですが、絶対と言っていい程、この勘定を使わなければ正しい処理ができません。

以下、これらの勘定を使って処理すべき例を示しますので、次のQ&Aを参考にしてください。

なお、事例が重複しているものがありますが、再確認の意味でご覧ください。

<お詫び>
くどくどと、同じような文章がありますが、本当に、「事業主貸」「事業主借」勘定の処理で悩んでいる方が多く、いつも当ホームページの検索項目の上位に入っていますし、このQ&Aが一番読まれているようです。一人でも多くの方の問題解決と理解に役立てて頂きたく、文章を挿入している関係上、読みににくくなっております。後日、時間があるときに校正を行う予定ですが、いろいろな表現があった方がニュアンスが伝わるのではないかとも考えております。


Q2 「事業主貸」「事業主借」使用事例です。入力文字数の関係上分割して掲載しました。Q1と合わせてご覧ください。

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innerlink【事例1】・・・事業主は事業で使用するボールペン1,000円を購入したが、現金の精算を行わなかった。

<仕訳>
事務用品費   1,000円 / 事業主借  1,000円
innerlink【事例2】・・・事業主の生活費として200,000円を事業用の現金から、事業主に支払った。

ご存じのように、個人事業主にその事業から給与を支払っても経費として認められていません。
しかし、事業主にも生活をしていますから、事業用の現金や預金から生活に必要な金額を引き出して生活費に充てています。

<仕訳>
事業主貸  200,000円 / 現金 200,000円
innerlink【事例3】・・・決算にあたり、電話代のうちから60,000円と、水道高熱費代から96,000円を事業主の生活費分として処理する。

支払った度に事業分と生活費分を区分して経理するのが理想です(各月の損益がより正確に計算できるため)が、この例では、決算時にまとめて1年分を計算する方法をとっています。
よって、期中は支払った際に全額を通信費や水道光熱費に計上しておき、期末に生活費相当額を各勘定科目から控除すると同時に事業主貸勘定に振替えています。

<仕訳>
事業主貸  156,000円 / 通信費    60,000円
/ 水道高熱費  96,000円
innerlink【事例4】・・・決算にあたり、自動車の減価償却費100,000円を計上する際、生活に使用している割合10%相当額10,000円を生活分として処理する。

自動車は1年間分の100,000円分(100%)の価値が減ってゆくと考えます。
しかし90%分が事業の経費であり、残り10%分は生活分であり、経費にすることはできませんので、「事業主貸」とします。

<仕訳>
減価償却費 90,000円 / 車輌運搬具  100,000円
事業主貸   10,000円 /
innerlink【事例5】・・・事業用の車両1,500,000円を購入する際、古い事業用の車輌を50,000円(減価償却の残高10,000円)で下取に出し、差額1,450,000円を現金で支払った。

<仕訳>
車輌運搬具 1,500,000円 / 現金   1,450,000円
/ 事業主借  50,000円
事業主貸   10,000円 / 車輌運搬具 10,000円

所得税法では事業用車輌の売却は譲渡所得(総合)とされているため、確定申告時に譲渡収入 50,000円、必要経費10,000円、差引40,000円の利益として申告します。・・・その年の譲渡所得がこれだけであれば、50万円の特別控除があるため、結果として課税されません。・・・ただし、消費税の計算上はこの譲渡収入50,000円を課税売上に加算する必要があります。

10,000円は売却時の下取に出した車輌の帳簿上の残存価格であり、上記のように仕訳をして、帳簿上の価格をゼロにする必要があります。一方でこの残存価格10,000円は、譲渡所得の取得価格になりますので、事業所得以外の所得に移したという意味で、「事業主貸」にします。同じく下取代金の50,000円も、事業所得以外の収入金額であるため「事業主借」にします。
innerlink【事例6】・・・写真業を営んでおり、得意先から150,000円の報酬に対し、源泉税10%相当額15,000円を差引かれ、135,000円を現金で領収した。

<仕訳>
現金     135,000円 / 売上  150,000円
事業主貸   15,000円 /

私の職業である税理士もそうですが、職業によっては、その対価から源泉所得税を差引かれるものがあります。・・・(所得税法204条)
この差引かれた源泉所得税は、確定申告の際に年間の所得税から先払いの税金として差引くことになっています。・・・給与所得者も同じですね。
この源泉所得税15,000円 は、事業所得の経費ではありませんので「事業主貸」で処理します。

【現金出納帳への記入の工夫】
(摘要)          (入金)       (出金)
売上           150,000円               ・・・・勘定科目「売上」
〃 源泉税                   15,000円    ・・・・勘定科目「事業主貸」
※差額135,000円が現金の増加となります。このようにすると1行1科目となり次のように簡単な仕訳で済みます。
従業員給与の源泉税や社会保険料の時にも、応用できて(振替伝票を作成しないで済む分)便利です。
<仕訳>
現金     150,000円 / 売上  150,000円
事業主貸   15,000円 /  現金   15,000円

この例では、売上はあくまで150,000円であり、差額を領収することになります。そして差引かれた源泉税は売上先に預けている金額(売上先は「預り金」勘定で管理し、原則支払日の翌月10日に税務署に納付することになります。)であり、経費とはなりません。
確定申告の際に税額控除として差引かれる金額になります。
事業所得の経費として処理することはできませんので「事業主貸」として処理することになります。

私の場合は、生活費とは区分して集計したいと考え、期中は「仮払所得税」という勘定を設定(資産)して管理し、期末に「事業主貸」勘定に振替えています。良かったら参考にしてください。

【期末における事業主貸、事業主借、当期利益の元入金への振替え】
※確定申告に作成する決算書の下の左側(借方)には「事業主貸」が、右側(貸方)には「事業主借」、「元入金」、「青色申告特別控除前の所得金額」が記入されていますが、翌期の決算書の右側(貸方)の「1月1日期首」には「元入金」の欄しかありません。

この「元入金」には前期の「事業主貸」、「事業主借」、「元入金」、「青色申告特別控除前の所得金額」の4つの差引金額を記入します。
・・・「事業主貸」、「事業主借」の差額と、前期の利益である「青色申告特別控除前の所得金額」は、前々期から繰越された「元入金」と合わせて、当期の元入金となるのです。
・・・ここで65万円までの青色申告特別控除後ではないのかとの疑問があると思いますが、青色申告特別控除額は仕訳をせず、申告の際に差引くことがでくる性格のものですから、会計ソフトで作成される損益計算書や貸借対照表には影響しないものです。
確定申告で提出する青色決算書には、仕訳で作成される損益計算書の当期利益(「青色申告特別控除前の所得金額」)から青色申告特別控除額を差引く欄が用意されているために混乱するのだと思います。

【事例 事業主貸勘定と事業主借勘定の振替】・・・事業主貸の残高3,500,000円と事業主借の残高1,500,000円を元入金に振替えるとともに、当期の利益(青色申告特別控除前の所得金額)2,500,000円を元入金に振替えます。

期首の元入金が仮に1,000,000円 だとすれば、下記の仕訳(黒字の事例の場合)をすることにより、期末(翌期首)の元入れ金の残高は1,500,000円 となります。これが翌年の元入金として繰越されます。

なお、私が使用したほとんどの会計ソフトでは、下記の仕訳が自動的に実行され(翌期更新処理の際)、通常、仕訳が表示されませんが、会計ソフト内部では下記の仕訳処理がされているいと推測されます。
したがいまして、手書きで作成する際には下記の仕訳が必要となります。

<仕訳>
事業主借  1,500,000円 / 事業主貸  3,500,000円
元入金     2,000,000円 /

当期利益   2,500,000円 / 元入金    2,500,000円 ・・・黒字の場合

元入金    2,500,000円 / 当期利益   2,500,000円 ・・・赤字の場合

※なお、上記の仕訳により元入金に繰り入れるため、元入金の残高は1,500,000円となりますが、税務署に提出する青色決算書の4ページの貸借対照表には振替える前の金額(元入金1,000,000円=期首元入金と同額を記入(前期における上記の仕訳をした後の元入金の残高)、事業主貸3,500,000円、事業主借1,500,000円、青色申告特別控除前の所得金額2,500,000円)を記入する必要があります。

(2011/04/13)
(改定2011/06/15)
(事例5追加2011/08/18)
(引出金勘定と事業主勘定の解説追加2011/09/16)
(事業主勘定を使う意味について追記 2012/01/20)
(事業主勘定を使う意味について追記 2012/02/16)
(税務署の青色決算書の貸借対照表の記入方法について追記 2012/02/21)
(事例6追加 2012/08/06)
(【事例6】に現金出納帳への記入例を追加 2012/08/16)

 


Q3 「事業主貸」、「事業主借」、「元入金」などのいろいろな疑問点の参考になれば・・・

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1、「元入金は相続税の対象になるか」との質問がありました。

相続税の財産に事業用の資産は加算し、事業用の負債は減算して計算しますが、「事業主貸」 、「事業主借」は財産や負債の実態はありませんので相続税の計算に関係しません。「元入金」は過去の利益や損失であったり、「事業主貸」、「事業主借」の振替したものの蓄積であることから、それ自体に相続税が課税されるものではありません。
相続税で課税の対象となるのは、あくまで、貸借対照表に計上された資産を相続財産とし、負債を債務控除として申告うることになります。(元入金は資産と負債の差額を意味します)
資産と負債を、それぞれ相続税法で言うところの時価で評価したものを相続財産、相続債務として申告することになります。
よって、資産と負債の差額である元入金そのものには課税されないことになります。資産と負債を事業用の財産、負債として申告したうえで、さらに元入金の額を相続財産として申告してしまうと、二重に相続税が課税されることになります。

なお、ここでいう貸借対照表は、相続開始時点(死亡日)のものですから、相続開始日から4か月以内に申告が必要とされている「準確定申告」をした際に作成した(死亡日現在)ものとなりますので、前年分の確定申告の控えを見ても正しい金額にはなりません。
死亡した年の1月1日から死亡日までの財務諸表(損益計算書、貸借対照表)を作成し、利益に対して所得税や住民税が課される場合には、それらの税金は「債務控除」の対象とし、その時点の現金預金や売掛金、機械装置などの資産を相続財産とするとともに、買掛金などの負債を債務控除することになります。
(2012/03/15)
(解説追加 2012/08/16)

2、「事業主貸」、「事業主借」などのいわゆる事業主勘定は、いつ清算するのでしょうか。

「貸」とか「借」という文字が入っているため、「いつか自分が生活費から事業用の現金に返さなくてはいけない」と誤解されている方が多いと思います。
元々、「生活している自分」と「事業している自分」は同じ人間でありますので、「いつか返してもらえる」とか「返さなくてはいけない」とかはありません。両方とも自分自信のものなのですから・・・。
所得税の「事業所得(農業所得も含む)」や「不動産所得」を複式簿記で計算するために、便宜上使用している勘定科目であると考えられます。
では、その金額はどうなるのかと言えば、青色申告特別控除前の所得金額(当期利益)とともに期末に元入金に振替えられ、翌年の期首には元入金の額が変動するのみで、、「事業主貸」、「事業主借」の残高は残りません。
ちなみに、翌年に繰越されるものは、貸借対照表に表示される科目のみであり、損益計算書に表示される、売上や経費の科目は繰越されず、ゼロからスタートします。そのおかげで、翌年の売上と経費が計上されてゆき、期末には当期利益が計算されるのです。
損益計算書の表示科目は繰越されませんが、売上と経費との差額である当期利益が期末に元入金に振替えられ、翌年の元入金の額が増減されていることになります。

(2012/03/17)

3、NPO法人ですが、「事業主貸」「事業主借」はどういう場合に使うのですか。

株式会社、公益法人、NPO法人等の法人の場合には、いくら創業者である代表取締役等(事業主に近い存在)から資金を借りても「役員借入金」や、貸付けた場合には「役員貸付金」で処理するため、これらの「事業主貸」「事業主借」の勘定は使いません。
あくまで、個人と法人は別人格との考え方です。
よって、会計ソフトで法人用を選択すると、、「事業主貸」「事業主借」などの勘定科目は用意されていません。

(2012/04/21)

4、青色申告特別控除はどの勘定科目で処理するのでしょうか。

青色申告特別控除は仕訳しません。
青色決算書の損益計算書には「青色申告特別控除額」として、10万円や65万円の金額を記入して所得金額を計算していますが、会計で仕訳するのは「青色申告特別控除前の所得金額」(会計上の利益)までであり、税務上、青色申告特別控除を引いて所得を計算しても良いことになっているだけです。
さらに、決算書の貸借対照表に記入する金額も「青色申告特別控除前の所得金額」であり、仕訳に影響させていないことが分かります。
扶養控除、基礎控除、生命保険料控除等の控除額も所得から引いてくれますが、これらも仕訳していないことと同じと、理解してください。
ただ、青色申告特別控除額は事業所得(農業所得も含む)や不動産所得から控除することになっていることから、決算書の最後で差引く様式になっているのです。

(2012/04/21)

5、個人で会計ソフトを初めて使う場合の残高の設定はどうしたらよいでしょうか。

個人の場合の会計期間は1月1日~12月31日です。
事業を開始した年の最初から導入する方は、全ての取引がその会計期間に発生しますので、残高の設定は必要ありません。

<<相続により事業を引継いだ場合>>
事業を開始した年の最初から導入する方と同じように、期首残高の設定は必要ありません。
ただし、事業開始時には被相続人の事業用資産が既にあって、それらを利用して事業を続ける場合がほとんどですので、その資産や負債を計上してから、日々の仕訳をして行きます。
例えば、父が死亡し長男が事業を引き続き行う場合にも、長男は、父親が死亡した日の翌日に事業を開始したように申告すると思いますので、基本的には死亡日現在の資産と負債を父親が死亡した日の翌日に取得したとして計上するとともに、その差額を元入金として経理することになります。
ただし、次のような事情もあり、一律に父親の資産や負債を上げることもできないことが多いです。
1. 預金は父親名義から長男名義に変更しないと事業に支障がでます。
売上の振込み口座、支払口座を変更する必要があるでしょう。
当然に切り替えるには時間が掛ります
2. 遺産分割の協議が遅れる場合もあるでしょう
3. 現実には無い資産や負債がある場合もあるでしょう
4. 父親名義の預金から死亡日以降も引き落とされている費用もあるでしょう

これ以外にも、父親及び長男の廃業、開業の手続きはもちろんですが、長男が青色申告する場合には新たに青色申告の届出を期限内(死亡日によって提出期限が異なります)に届け出ることが必要ですし、消費税においても相続があつた場合の特例がありますので注意が必要です。
相続の場合には、どのように遺産分割が決まるか、などのより、現実にはいろいろな要素が加わりますので、専門家と相談することをお勧めします。

 

(相続により事業を引継いだ場合について追記・・・2013/01/20)

会計期間の始めから導入しようとする場合

<<青色申告をしていて、前年の貸借対照表がある場合>>
前年の青色決算書の貸借対照表(青色決算書の最後のページ)の数値を残高に入力することにより完了します。
ただし、このQ&Aで再三解説しているとおり、前年の貸借対照表で示されている「事業主貸」「事業主借」の勘定と、「青色申告特別控除前の所得金額」は「元入金」に振替えられますので、その差引金額を元入金に入力します。
なお、会計ソフトによっては、資産、負債の各金額を入力すると、その差額として、自動的に「元入金」を計算してくれるものや、入力された借方、貸方の合計を表示し、その差額を表示してくれるものもがあります。
いずれも、資産と負債の差額=元入金の額となりますので、上記の振替後の元入金の計算を、わざわざする必要はありませんが、検証の意味で計算してみるのも良いでしょう。

<<前年まで白色申告をしていて、前年の貸借対照表がない場合>>
前年の貸借対照表とは、前年の12月31日現在の「資産」と「負債」と、「資産と負債との差額の元入金」を示したものですので、つぎのように、それぞれの金額を調べてパソコンに入力します。
<「資産」を調べる>
・事業用の現金があれば、その金額を調べる。
・預金通帳の前年12月31日現在の残高を調べる。
・減価償却の明細書(白色申告の場合でも作成しているはずです)から、建物、機械装置、備品、車輌運搬具などの資産の種類ごとに「未償却残高」を調べます。
・・・各会計ソフトには減価償却費を計算するための「固定資産台帳」などの名称で、減価償却の計算書が用意されていると思いますので、その明細書に全ての項目を入力して、導入しようとする会計期間の減価償却費が正しく計算されるか検証することも大切です。
・前年12月31日現在の未回収の売上代金である売掛金の残高を調べる。

<「負債」を調べる>
・前年12月31日現在の未払の仕入代金である買掛金や、費用の未払金の残高を調べる。
・前年12月31日現在の銀行などからの借入金の残高を調べる。

この他、人によって資産、負債の内容が異なりますので、青色決算書に表示されている「科目」を見ながら、事業用の資産と負債を調べます。

会計期間の途中から導入しようとする場合

会計期間の途中においては、売上や経費が既に発生していますので、導入直前までの貸借対照表や損益計算書又は導入直前までの試算表が作成されている必要があります。
その数値に基づいて、資産、負債、収益、費用の額を入力します。元入金は上記と同じく、パソコンが差額として計算してくれます。

直前まで白色申告の場合は直前までの貸借対照表の作成は困難だと思いますので、前の項目で解説した方法で会計期間の最初からパソコンを導入したものとして、パソコンに入力し直したほうが賢明だと思います。

(2012/10/20)

 


Q4 その他の疑問(記帳)

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後日出てきたレシート(日付が前後した場合)などの現金出納帳への記入方法
経理担当者にとって、既に記入した現金出納帳の日付が前後することって、結構ストレスです。
相手が社長であれば文句も言えないし、尚更です。
レシートや領収書が後から提出された場合、日付が前後してしまうのは仕方がないと思います。
私の事務所では、提示があったとき(=会社が実際に現金を支払ったとき)の日付の欄に記入します。
その際、摘要欄に「5/18 ホームセンタームサシ十日町店 スコップ他  〇〇〇円」のように記入します。
このように、レシートや領収書に記入された日付を「5/18」というように記入するのです。
これで、記入日の会社の実際の現金残高が一致します。
あくまで、現金の管理者である経理担当者が実際に金庫から現金を出金した日に記帳しないと、現金残高が一致しないのです。

 

(2012/06/14)

源泉徴収される業種(個人)での現金出納帳への記入方法
私の職業である税理士は、報酬を受ける際、所得税法(法第204条第1項第2号)の規定により、100万円までは10%、100万円超は20%の源泉所得税を差引かれて支払われることになっています。
支払先が源泉徴収義務者である場合に限定されていますので、支払先である顧問先等が法人の場合は必ず差引いて支払わなければならないし、個人の場合は事業当で給与の支払いがある場合に限られています。

<取引例>
税理士報酬  30,000円 + 1,500円(5%) = 31,500円
源泉所得税  30,000円 × 10% = 3,000円
差引入金額  31,500円 – 3,000円 = 28,500円

<仕訳例>
現金     28,500円  /  売上 31,500円
事業主貸   3,000円  /
(当事務所では、年間の源泉税を把握する目的で、「事業主貸」とはせず、期中は「仮払所得税」という資産勘定を作成して管理しています。そして期末に本来の勘定科目である「事業主貸」勘定に振替えています。・・・年間の取引金額や、売上先が多い方は参考にしてください)

<現金出納帳への記入例>
勘定科目   摘要欄           入金       出金      残高
(売上)    〇〇商店 報酬     31,500円
(事業主貸)    〃  源泉所得税           3,000円   28,500円

このように2行に分けて記入すれば、1対1の取引となり、単純な記帳が可能です。
預金へ振込の場合には、差引で通帳に記入されるので、別途<仕訳例>のような仕訳が必要になります。

 

(2012/06/21)

個人の農業所得に使用する勘定科目にはどんなものがありますか。

昨年の記帳指導の際に、お客様から提供された勘定科目表(公表の同意済、ご自分で作成されました)を一部手直しして作成してみました。・・・PDF版とエクセルで提供します。
青色決算書を作成する際の参考となるように、各勘定科目の横に決算書用の項目名を記入しておきました。(エクセル形式のみ)
白色申告の農業所得にも参考になるのではないでしょうか。
なお、「ツカエル青色申告」 という会計ソフトのコード番号で作成してあります。
エクセル形式ですので、ご自分の会計ソフトに合わせてコード番号を変更するなど、ご活用ください。

*エクセル形式は表示されるまで、時間が掛りますので、1分くらい待つつもりでご覧ください。

*エクセルには更にQ&Aのページを設けてあります。今後も疑問点を追加してゆく予定です。

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(2012/07/24)
(PDF,エクセルデータに解説を追加 2012/12/13)

(個人農業勘定科目を更新(PDF・エクセル) 2014/07/17)

中山間地域直接支払制度の交付金の処理について・・・個人の場合・・・あくまで私見)

中山間地直接支払制度の交付金には、農業者に「直接支払われる分」と集落協定に伴う「共同取組分」があります。
正当な計上方法が明示されていませんし、共同取組の経理担当者の能力によっても違いがあるので、処置方法はバラバラだと思います。
その経理方法も、市区町村に合わせて収支(入金と出金を記録したもの)に基づき作成されていると予想されますので、所得税法で求められている収益と費用とは完全に一致していませんし、おそらく共同購入の機械等の減価償却費も計算されていないでしょう。本来は所得税法の収益と費用に組替えをして、各厚生メンバーごとに案分をして通知すべきと考えまが、そこまで経理担当者に求めるのも酷だと考えます。

そこで、当会計事務所での対応を紹介させて頂き、1つの例として参考にして頂ければと思います。
(税務署等から異なる指摘があったとしても、責任は負いかねますのでご了承ください。)
複式簿記を前提に説明しています。また、消費税の課税事業者の方もおられると思い、消費税の課否判定も入れました。

「直接支払われる分」・・・雑収入に計上します。(消費税は不課税仕入)

「共同取組分」・・・集落の担当者から「交付金の額」と「経費の額」の明細が届くと思いますので・・・
・「交付金の額」・・・雑収入に計上します。(消費税は不課税売上)
・「経費の額」・・・・雑費に計上します。(消費税は不課税仕入)
消費税については支払の明細が分かればそれに基づき、 個々に判定しますが、通常は支払額の合計しか明記されていませんので、内容不明につき不課税仕入としています。
・「交付金の額」と「経費の額」との差額・・・集落協定が解散されるまで「中山間地積立額」などの勘定科目を作成し資産の部に計上しておきます。(資産ですので当然に不課税仕入)
解散時に資産の処分が行われ、報告があるでしょうからその内容に応じて「中山間地積立額」を取崩し処理する予定です。
この差額の性格は各集落により異なります。預金の残高であったり、もしかしたらトラクターなどの資産として処理しているかもしれません。
いずれにしても、この交付金は何かに使用する以外はありませんので、もしかしたら各人には戻って来ないケースもあるかと思います。
その時には、雑費(消費税は内容が不明なため不課税)とするしかないのではないでしょうか。

(2012/11/17) 

「共同取組分」の経理処理についてもう1つの方法

共同取組は5年ごとに新規の事業として更新されているようです。お客様の平成27年分の確定申告の際には収入より経費の額が多い、いわゆる赤字の通知が来ました。これは、翌年の支出に充てるため組合で留保(預金として残しておいた)していたお金などがあり、4年間は黒字としていましたが、5年目にはお金が残らないように経費として使用したため、収入より支出が多くなり赤字となったようです。

このような場合には上記の方法では「中山間地積立額」との差額を雑収入か雑費に経理すればよいことになります。

また、5年目には経費として支出され、現金等として組合員としての農家に入金されないのであれば・・・、

・「交付金の額」・・・経理しない。                          ・「経費の額」・・・・経理しない。                          ・「交付金の額」と「経費の額」との差額・・・各年分に雑収入、又は雑費として計上します。

消費税が課税されない方は以上で良いと考えます。

消費税が課税される方も消費税の計算において不課税売上、又は不課税仕入ですので、計算に影響はないと考えます。

以上、参考までに追加させて頂きました。今年の分から更新されていますので、当事務所ではこの処理方法に変更しました。

(新たな処理方法を追加 2016/5/8)